革製品製造工
革靴や鞄のほか、大型のソファーまで、暮らしのさまざまなシーンに関わる革製品。手触りがよくオシャレなので、愛用している人も多いでしょう。
愛好家なら1度は考える「オリジナルの革製品が作りたい」という思い。もし、革製品を作る仕事に就いたなら、一体どんな日々を送ることになるのでしょうか。
取材協力:三陽工業株式会社
「ニッポンのものづくりにわたしたちの力を」
- 三陽工業社員インタビュー
日本の工業界を代表する数多の企業に優秀な正社員エンジニアを派遣させている三陽工業株式会社に取材・監修協力を得ました。「ニッポンのものづくりにわたしたちの力を」をスローガンに掲げる同社での、ものづくりの楽しさや喜び、やりがい、誇り…、そして今後の展望を語っていただきました。
革製品製造工の仕事内容
求人で主に見られる革製品製造工の仕事は、「革のなめし」「革の染色」「革の裁断」「革の縫製」「仕上げ・検品」の5つ。それぞれについてくわしく解説いたします。
革のなめし
動物からとった「原皮」を加工し、腐敗しない丈夫な「革」に変える作業です。
大きなドラム状の機械に原皮と水、クロムなどを配合した薬品を入れ、回転させることで原皮に薬剤が浸透。約1日回転させれば腐敗や劣化しにくい丈夫な革が作られます。
クロムのような薬品を使う場合は「クロムなめし」といい、安価なレザー用品に使用されます。高級な革製品の場合、ミモザからとれるタンニンを使用し、時間をかけてゆっくりとなめすのです。
工場が出されている求人では、主になめしたあとの革を延ばす・叩く・ローラーで圧力をかけるなどの作業です。手作業で行う工場の場合、水分を含み、重くなった革を扱うので体力が必要とされます。
革の染色
なめして加工した後の革に色をつける仕事です。色のついている革の上に染料を塗り、ムラなく仕上げます。
染色と同時に、表面への加工や厚さの調整、型押しなどの作業を行う場合もあります。
革の裁断
用意された型紙を用い、革包丁と呼ばれる革のカット用の工具で裁断します。
端の部分を革すき機で薄く削ぐ、といった加工を同時に行う場合もあります。
自動で裁断を行う機械がある工場だと、機械を操作するオペレーターが求人で募集されるようです。
革の裁縫
裁断された革をミシンで縫い、製品の形にしていく作業です。財布などの製品だと、革専用ののりを使って組立てる場合もあります。
力作業はありませんが、ミシンを使った細かい作業を行うので、手先が器用な人ほど有利な仕事といえます。
仕上げ・検品
裁縫後の革製品の仕上げを行う業務です。革から出ている余分な糸のカット、ホックやファスナーの取り付け、細部への処理などを担当します。
検品作業では、仕上がった製品の状態を調べ、出荷してもよい状態かを調べます。
工場によっては仕上げと検品をセットで行う場合や、検品後と出荷がセットの場合もあります。
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働き方や仕事内容について詳しく
革製品製造工の勤務スケジュール
革製品製造工における勤務形態ですが、中小規模の工房サイズで働く日勤のみの場合から大規模工場で働くシフト制勤務の場合まで様々となります。
1日の流れ
ある革製品製造工の1日の流れを下記にご紹介します。
- 8:00 始業、革のパーツ作り
- 10:00 小休憩
- 10:15 内装をミシンがけ、ボタン付け
- 12:00 昼食
- 13:00 作業再開、パーツ作り
- 15:00 小休憩
- 15:15 鞄の持ち手のミシンがけ
- 17:00 終業、帰宅
上述の例は、鞄や財布などの革製品を製造する工場で働く方の例です。中小規模の工場の場合、勤務スケジュールは日勤のみとなり、朝8時から夕方17時までというケースがほとんどとなります。また、集中力を維持するために午前と午後に小休憩をはさむ工夫をしている工場もあります。このような規模の工場の場合、ノルマや納期の状況にもよりますが、残業があるのは稀のようです。また、製作の自主練習をしたい人は工房に残ってすることができるようです。休日は週休2日を土日に取れる場合が大半のようです。
その一方、大規模工場においては他業種と同じように24時間操業のケースが多くなります。その場合、2交代制または3交代制のシフト勤務を行い、1日の労働時間は8〜12時間となります。また、残業はあまり無いようです。シフトの決め方は、4日間続けて働いて2日休む4勤2休制であったり、日勤と夜勤を一定回数づつこなして数日休日となるシフトであったり、工場によってまちまちとなります。これら固定シフトに加え、正社員の場合は年末年始・ゴールデンウィーク・夏季休暇など年間合計で110〜125日ほどの休暇が取れる工場が数多くあります。この点も工場により異なりますので、就業前に確認することをおすすめいたします。
年収
工場や工房によって収入は異なります。大卒の給与より高卒の給与はやや低めのようです。しかし、工場で生産管理のような役職につくことや、独立して自分の工房を開くことで、年収をアップさせる道も存在します。初任給は月収20~25万円、年収は300万円前後が相場です。経験者枠での求人も多く、技術を持っていれば年収500万円前後の仕事に就くことも難しくありません。大きな工房やメーカーで働く場合は、現場で経験を積んで生産管理やデザインなどモノづくりの上流にステップアップするのが年収アップにつながります。
年収を大幅にアップさせるためには、技術を磨いて独立する方法も検討すべきでしょう。最近はホームページやSNSで宣伝活動をしやすくなったため、デザイン性や技術に自信があればオリジナルブランドを展開する手もあります。技術を高めていけば大手工房のOEMとして、安定した収入を得るルートもあります。
技術を高めていくことはもちろん、接客や販売、クライアントとの打ち合わせなどの能力も、年収アップには不可欠です。
将来性
革製品製造の業界は深刻な人手不足であり、事業者数は年々減少傾向にあります
これだけ聞くと将来性に期待できないように思えますが、実は「リペア」に関しては一定数の需要があるとされています。革製品は長い年月使えるのが特徴。日ごろから愛着を持っているので、縫製のほつれや劣化などが現れた場合、買い替えよりもリペアを希望する人が多いのです。
機械によるオートメーション化で製造工が不要となる、といった問題もありますが、革製品の愛好家の中には手縫いの製品を好む人もいます。そういった点を鑑みると、決して将来性のない仕事とはいえないでしょう。
革製品製造工になるには
製造工になる1番の近道は、革製品の製造工を募集する求人に応募すること。
人手不足・後継者不足の影響からか、未経験者の募集をしている求人も少なくありません。求人に応募し、採用されれば、すぐにでも製造工として働くことができるでしょう。
また、革製品の加工や製造の技術を学べる専門学校も存在します。高い技術を習得してすぐに職人として働きたいという人や、将来独立して自分の工房を開きたいという人は、学校に通うことをおすすめします。
革製品製造工のやりがいとは
長年と技術と経験が要求される仕事なので、決して楽な仕事とはいえない革製品製造工。
しかし、妥協を許さない丁寧な作業により美しい革製品ができあがった時、ものづくりの仕事だけが得られる達成感を覚えるはずです。
多くの人に長く使われ続ける革製品は、あるいは所有者にとって一生ものの大切な品となることも。ものづくりの業界の中でもやりがいを持って働ける仕事といえるでしょう。
未経験OK!三陽工業株式会社の革製品製造工の求人例
2021年7月時点、三陽工業では該当の求人がありませんでした。
取材協力・監修者:三陽工業株式会社
「人の無限の可能性」を原動力に、日本のものづくりの現場を元気にする
三陽工業株式会社は、1980年・昭和55年に明石市にて設立以来、ニッポンのものづくり産業の中で事業を推進し続け、現在では全国35の拠点をベースに事業を展開している企業です。
「人の無限の可能性」という言葉を胸に、働く社員一人ひとりの中に秘めている可能性を「三陽工業という働き方」で引き出し、日本のものづくりに貢献し続けてきました。頑張る人が報われるという当たり前の状況を作り出すため、さまざまな環境を整備している点が社員からも好評を得ています。
役職・部署を希望してプレゼンを行うことで希望が叶うチャンスを与えられる「立候補制度」や、さまざまな種類の表彰制度など、社員一人ひとりの頑張りが必ず形になる環境の整備に力を入れています。