漆器製造工
漆器は日本の伝統工芸品のひとつであり、海外の人たちからも贈答品として人気を博しています。手作りで仕上げる場合や、工場で大量生産する場合があり、高級品から求めやすい価格品まで幅広く販売されています。そんな漆器に携わる漆器製造工について年収などまとめました。
取材協力:三陽工業株式会社
「ニッポンのものづくりにわたしたちの力を」
- 三陽工業社員インタビュー
日本の工業界を代表する数多の企業に優秀な正社員エンジニアを派遣させている三陽工業株式会社に取材・監修協力を得ました。「ニッポンのものづくりにわたしたちの力を」をスローガンに掲げる同社での、ものづくりの楽しさや喜び、やりがい、誇り…、そして今後の展望を語っていただきました。
漆器製造工の仕事内容
漆器を製作するにあたって、30~40程度の工程を経ています。それぞれの工程で行う作業が異なるため、仕事内容も様々あると言えるでしょう。
- 素地作り 器のベースとなる形を作る作業です。お茶碗やお皿、重箱など漆器を施す器によって形が異なってくるため、それぞれに適した素地を作成することから漆器作りはスタートします。たとえばお茶碗などの丸みを帯びたものであれば、2週間以上の時間を要し水分をゆっくり抜き、乾いた状態でろくろを使いながら削ると言った流れです。
- 下地付け 漆を塗る前に、表面を整えるために「下地」を塗る作業です。下地には渋下地と錆下地の2つがあり、素材や状況によって選択されます。この2つは下地に使用する材料や工程が異なり、柿下地は柿渋や炭などを混ぜてその上から柿渋を塗るもので、錆下地は「砥の粉(非常に目の細かい粉)」と生漆を混合したものを塗り付けます。
- 塗り 漆器を製作するにあたって、もっともメジャーな工程ではないでしょうか。1度塗って終了という訳でなく、さらに下塗り・中塗り・上塗りの3工程に分けられます。塗っては、その都度乾燥させ研いでいくという作業を何度か繰り返し、最終的に上塗りを行います。
- 加飾 上塗りまで終えると、次に金粉や銀粉などで鮮やかな模様を描いていく作業に移ります。漆器の中には絵を直接彫り、金箔や顔料などで色を付ける沈金と言った方法も。さらにスクリーン印刷という方法も生み出され、この手法によって手間をかけずに模様を施すことができます。
つまり、一つの漆器に時間を要しながら製作するのか、一度にたくさんの漆器を仕上げていくかによっても仕事内容は異なってきます。
勤務体系
勤務地
漆器製造工の勤務体系は、昔ながらの徒弟制を採用している工房が多いようです。このため、家内工業的な、地場産業の工房が多く、そちらに出向いていく必要があるようです。有名な輪島塗などは、やはり本場石川県の攻防が多いようです。
勤務形態
徒弟制のため、一人前になるまでの4~5年は厳しい修行を受ける必要がありますが、大幅な残業のようなものはないといわれています。賃金形態としては日給月給がおおく、研磨といった軽作業はパートさんも活躍しているそうです。
修業を終え一人前になると、独立する方も多くいるようで、1国1城の主となるのも夢ではないようです。
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年収
漆器製造工は、素地製造工・下地工・漆塗工・沈金工などに大きく分けられます。そのため、それぞれの職種で手取りや年収などが異なってくるため一概にハッキリした金額を提示することはできません。ただ匠の技をもった職人であれば、高収入が期待できるでしょう。
漆器製造工の平均的な年収は、40代の方で約400万と言われています。高卒の方であれば初任給の月収が約16万円、高専や短大卒の方で約17万円、大卒の方で約20万円、大学院卒の方で約22万円前後です。
決して年収や月収が高い職業とは言えませんが、自身が手掛けた作品が作れる、人々に賞賛されるなどの点で年収以上のやりがいを感じるのかもしれません。もちろん芸術性に優れた作品を生み出すことができれば、日本国内に留まらず海外からも購入希望者が集まり、年収アップに繋がる可能性もあります。夢のある職業ともいえるでしょう。
将来性
近年、食器は大量生産され、非常にリーズナブルで気軽に購入することができるようになってきました。加えて欧米文化が広まるにつれ、徐々に漆器の売り上げは低迷してきたと言われています。
しかし漆器は日本の伝統技術であり、文化保護という観点からも決してなくしてはいけないものでしょう。和食が世界文化遺産に登録されたことからも、美しい食器で和の心を継続していくことは重要といえます。そのため漆器製造工と呼ばれる職業が将来的になくなるということはあまり考えられません。人数が減っていく可能性はありますが、僅かでも存続しつづけていくと考えられます。
ただ、漆器製造工になったからと言っても将来が安定するとは言いにくいのが現状。大量生産が進むにつれて、安価に漆器を製作することができるようになったため、漆器製造工の人数は減少していく可能性があります。もちろん質の高い品物を求める人もいるため、職人としての腕が高ければ将来性は生まれてくるでしょう。漆器製造工として将来安定したいと考えているのであれば、しっかり腕を磨き、匠の技を身に付けることが大切になってきます。
漆器製造工になるには
漆器製造工になるために必須の資格はありません。そのため漆器を製作する工場に就職する、職人に弟子入りすることで漆器製造工としての道が開かれるでしょう。もちろん漆器作りに関する実技を教えてくれる学校や職業訓練校などで学んでおけば就職活動にも優位に働きます。
ただ漆器製造業の場合、弟子入りを行い、そこで技術を学ぶという文化が根強く残っています。その場合には約4~5年の修業期間を要するそうです。そういった修行時代を経て、はじめて一人前の漆器製造工へとなっていくのが普通です。
漆器製造工として向いている人の特徴は、几帳面さや集中力があるかどうかです。漆器を手作業で製作する場合、非常に繊細な作業が求められます。わずかなズレも許されないような世界のため、集中力を高めた状態で作業ができるかどうかも重要でしょう。手先の器用さや、研ぎ澄まされた感覚も必要です。もちろん芸術的なセンスも欠かすことができません。さらに、お椀やお皿など素材によって塗り方や道具なども異なってくるため、漆器だけでなく素材や道具などに関する知識も必要になってきます。ただ知識に関しては修行の時代に深く学ぶこともできるでしょう。そのため漆器製造工になるために必要なのは、手先の器用さや集中力、そしてこれらを学ぶためのモチベーションとなる、漆器に対する熱い思いです。
まとめ
日本の伝統文化のひとつである漆器。それに携われる職人が漆器製造工です。漆器自体の売り上げは徐々に低下していますが、日本にとっては決して廃れてはいけない必要不可欠な職業と言えます。
とくに資格も必要なく、漆器に関する熱い思いを抱いていれば漆器製造工になることができます。もちろん漆器について教えてくれる学校などもあるため、基本的な知識を得るために通うのも一つの手でしょう。師弟文化も根強く残っている職業でもあるため、親方を探し弟子入りする方法もあります。4~5年以上修業し、しっかりと技術を身に付けてはじめて漆器製造工として一人前と認められるでしょう。
漆器製造工に求められることは集中力や器用さ、几帳面さなどです。また自分の作品を創り出したいという想いも大切でしょう。漆器製造工になって、自分自身の作品を世に出してみたくはありませんか?
取材協力・監修者:三陽工業株式会社
「人の無限の可能性」を原動力に、日本のものづくりの現場を元気にする
三陽工業株式会社は、1980年・昭和55年に明石市にて設立以来、ニッポンのものづくり産業の中で事業を推進し続け、現在では全国35の拠点をベースに事業を展開している企業です。
「人の無限の可能性」という言葉を胸に、働く社員一人ひとりの中に秘めている可能性を「三陽工業という働き方」で引き出し、日本のものづくりに貢献し続けてきました。頑張る人が報われるという当たり前の状況を作り出すため、さまざまな環境を整備している点が社員からも好評を得ています。
役職・部署を希望してプレゼンを行うことで希望が叶うチャンスを与えられる「立候補制度」や、さまざまな種類の表彰制度など、社員一人ひとりの頑張りが必ず形になる環境の整備に力を入れています。